更年期は閉経前後5年間の10年間のことです。この時期に体に起こる大きな変化は女性ホルモンの減少です。激減といっても過言ではないほどです。閉経って生理がなくなって楽になるからいいなー、なんて言っていられないのが女性の体の繊細なところなのです。
ふたつの女性ホルモン!エストロゲンとプロゲステロン
まず、女性ホルモンについて基本的なことを知っておきましょう。女性ホルモンにはエストロゲンとプロゲステロンのふたつがあります。
女性らしさを作り出すエストロゲン
卵胞ホルモンとも呼ばれます。別名美のホルモンというほど女性の美容と健康に深く関与しています。女性が丸みを帯びた体やハリがあって決め細やかな肌、艶やかな髪でいるのもエストロゲンの作用によるものです。
母なるホルモン、プロゲステロン
黄体ホルモンといったほうが分かりやすいかもしれませんね。妊娠出産には欠かせないホルモンです。エストロゲンを抑える作用もあります。これはこれで大事なことなのです。
更年期を知るにはエストロゲンを知ろう!
女性ホルモンの主役はエストロゲンです。更年期の不調の原因もエストロゲンが減少するからなのです。まず、エストロゲンが女性の体に及ぼす作用をみてみましょう。
- 髪にハリと艶を与える
- 記憶力や認識力を高めるなど、脳細胞の機能を維持
- 気分を明るく保つ
- 皮膚に弾力や潤いを持たす
- 骨形成を助けて骨量を増やす
- 乳腺を発達させ乳房を大きくする
- 心臓や血管の病気にかかりにくくする
- 免疫機能を高める
- 子宮を育て月経をコントロールする
- 膀胱や尿道の粘膜に潤いと弾力を持たせる
- 膣内の潤いを保ち、酸性に保って雑菌の繁殖を防ぐ
上記にあげただけでも、エストロゲンがいかに女性の健康と美容に関与してきたかわかります。その恩恵を受けられなくなるのが更年期以降の女性だと考えるとぞっとしますね。
更年期にエストロゲンが減ると?自律神経失調に!
では、どうしてエストロゲンが減少すると更年期症状が起こるのか?鍵は自律神経です。
女性ホルモンの指令は視床下部
エストロゲンは卵巣で作られますが、その指令は脳の視床下部が出します。厳密に言うと、「視床下部」→「下垂体」→「卵巣」となっています。これは一方向から行われるのではなく、卵巣からフィードバックがあります。卵巣から一定の分泌があると、その情報は視床下部に伝わり、視床下部は下垂体に分泌を調整するよう指令を出すのです。
卵巣機能の低下で視床下部が混乱!
性成熟期には、「視床下部」→「下垂体」→「卵巣」の命令系統が円滑に機能しています。そのために周期的な月経が起こるのですね。ところが、更年期になって卵巣機能が低下してくると、卵巣はそれまで通りの働きができなくなってしまうのです。
エストロゲンが十分に分泌されないと、視床下部は分泌をするように指令を出します。しかし、卵巣は指令通りの量を作れなくなっています。それでも視床下部は矢継ぎ早に指令を出していきます。
このように、視床下部はエストロゲンを出せ!と、どんどんヒートアップしていきますが、そのときに近くにある自律神経にも混乱が飛び火してしまい、同調して乱れてしまうのです。更年期の症状の多くが自律神経失調症を伴うのはそのためです。
更年期以降、エストロゲンってゼロになる?
卵巣は閉経を迎えると機能を完全に停止し、エストロゲンを作らなくなります。だからといって、女性の体からまったくなくなるわけではないようです。ちょっと安心。人間の体は不思議なもので、副腎皮質から微量ながら作られます。
副腎皮質から作られるエストロゲン
その仕組みは、副腎皮質から分泌される男性ホルモンが、酵素の力を借りてエストロゲンに変換されます。でも、その量はごくごく微量なのです。
男性ホルモンと女性ホルモン|エストロゲンが作られるまで
ちょっとここで、エストロゲンがどのように生成されるのか紹介します。エストロゲンとプロゲステロンの元になるのがコレステロールです。コレステロールからプレグネノロンが作られます。プレグネノロンとはある物質に変わる前の前駆体のことです。あまり気にしなくてよいです。
プレグネノロンからプロゲステロン(女性ホルモン)が作られます。また、プレグネノロンは男性ホルモンのアンドロゲンも作りますが、プロゲステロンからもアンドロゲンが作られます。ややこしいですね。
アンドロゲンにアロマターゼという酵素が働くと、アンドロゲンがエストロゲンに転換します。
「コレステロール」
↓
「プロゲステロン」女性ホルモン
↓
「アンドロゲン」男性ホルモン
↓
「エストロゲン」女性ホルモン
人体の不思議ですねー。ちなみに、男性の場合、精巣でアロマターゼ活性が抑制されるので、女性ほどエストロゲンに変換されないので、男性ホルモンとして残るわけです。
閉経女性のエストロゲン量は男性より少ない!
エストロゲンには、エストロン(E1)、エストラジオール(E2)、エストリオール(E3)の3種類があります。この中でエストラジオール(E2)が一番活発で、婦人科で更年期の診断材料になる血中のホルモン値を見る場合、エストラジオール(E2)です。
性成熟期には、このエストラジオールが血中に大量に存在しています。また、上記のように男性にもエストラジオールが存在します。その量は40pg/mL程度です。
さて、閉経後の女性のエストラジオールはどのくらいなのでしょう?ある書物によると
30pg/mL以下に減ってしまうとか!?先日の記事にも書いたのですが、閉経を判断する数値は18pg/mL以下です。
なんだかガックリきてしまいました。まあ、でもそれだけ体の変化が大きいことは自覚して、しっかり健康管理をしていきたいと思います。