更年期以降、女性の骨はもろくなりちょっとしたことでも骨折をしやすくなります。
もともと女性は男性より骨量が少ないうえに、閉経後エストロゲンが急激に減少し骨を丈夫に保っていた働きがなくなってしまうからです。
骨を丈夫に保つことは健やかな生活のためにとても重要です。今回は骨粗しょう症の原因と対策、予防について紹介します。
骨粗しょう症って何?更年期以降骨の老化の危険性
骨粗しょう症という病気は女性にとって宿命ともいえるものです。妊娠、出産によって体内のカルシウムを使い、さらに閉経後は骨量を維持する働きが激減してしまうのです。
老年期女性の7割がかかっている
骨粗しょう症は、更年期を迎える50歳前後から増えてきます。50代後半では2割近くの人が、60代後半になると半数の人がかかっています。老年期の80代では約7割の女性が骨粗しょう症なのです。
骨粗しょう症とは?
骨は3種類の細胞からできています。骨を壊す破骨細胞、骨を作る骨芽細胞、このふたつをコントロールしている骨細胞です。
骨は絶えず破壊と再生を繰り返しているのです。
ところが、加齢やなんらかの原因により骨を壊す細胞の働きのほうが強くなって骨量が低下します。そうなると骨はスカスカになって骨折しやすくなります。これが骨粗しょう症です。
更年期から増える理由は?骨とエストロゲンの関係
更年期以降の女性は骨量の低下が急激に進みます。それは女性ホルモンのエストロゲンと大きく関係しています。
エストロゲンの骨への働き
エストロゲンは骨量を維持する作用があります。更年期になると卵巣から分泌されるエストロゲン量は減少していきます。やがて閉経を迎えるとその量は激減します。
破骨細胞をコントロール
エストロゲンが骨量を維持するしくみをみてみましょう。エストロゲンには破骨細胞に作用して細胞死を引き起こす作用があります。破骨細胞の数や寿命をコントロールしているわけです。
更年期にエストロゲンが減少すると、破骨細胞が暴走を起こし骨の破壊が急速に進んでしまいます。骨芽細胞の再生が追いつかなくなり骨量が低下していきます。
なりやすい人は?閉経後の骨粗しょう症チェック
更年期以降、注意しなければならない骨粗しょう症。以下のような人は要注意です。
- 小柄で痩せ気味
- 子供の頃偏食だった
- 無理なダイエットをしたことがある
- 牛乳や乳製品はあまり摂らない
- 体を動かすことが嫌い、少ない
- 深酒をすることが多い
- 喫煙習慣がある
こんな人は特に注意!
また、以下の人はひとつでも該当する場合は、閉経後1年以内には骨量を調べましょう。
- 閉経前に卵巣(両側)を切除している
- ステロイド剤を長期間服用している
- 胃の切除手術を受けている
- 家族に骨粗しょう症と診断された人がいる
更年期には骨量検査を!
骨量測定は整形外科だけでなく、最近は婦人科でも測定をするところが増えています。ホルモン補充療法を行うときにも受ける検査です。
骨粗しょう症は治る?骨量を増やすHRTと投薬
一度もろくなってしまった骨は元に戻すことは不可能でしたが、最近は骨量を増やす薬が次々開発されています。
HRTで骨量の急減を防止
更年期障害の治療でさるホルモン補充療法(HRT)は骨粗しょう症の予防にも効果があります。骨量が急激に減少するのは閉経後の5年間です。この期間にHRTを投与すると骨量の減少をかなり防ぐことができます。
女性ホルモン以外の治療薬
HRTは骨粗しょう症予防に有効ですが、長期投与は乳がんのリスクがあります。また、60歳以降のHRTは脳梗塞などのリスクが高まるという報告もあります。
更年期以降は他の薬剤を選択することが一般的です。骨粗しょう症の治療薬をいくつか紹介します。
骨粗しょう症治療薬
- カルシウム製剤
- 活性型ビタミンD製剤
- ビタミンK2製剤[/l]
- 選択的エストロゲン受容体作動薬(サーム)
- ビスフォスホネート製剤
- 副甲状腺ホルモン(PTH)
更年期からの予防法は?食事と運動療法
骨粗しょう症の治療薬は新薬が開発されていますが、まずは予防と進行を抑えることが大切です。それには日々の食事と運動が効果的です。
カルシウムを効率よく摂る
食事ではカルシウムやビタミンDを含む食材を積極的に摂りましょう。しかし、カルシウムは他の栄養素の比べて吸収率が低いので、効率よく摂ることが必要です。
効率よく摂るヒント
- 良質なタンパク質と一緒に摂る
- ビタミンD、Kは吸収を促進する
- マグネシウムを十分に摂る
- 酸味で胃酸が促進されて吸収率を促進
注意する点は、加工食品に含まれるリン酸はカルシウムの吸収を阻害します。また、塩分過多やアルコールの摂り過ぎも控えましょう。胃が荒れると吸収率が悪くなります。さらに、ビタミンDの働きも抑えてしまいます。
運動で吸収率アップ
食事で摂ったカルシウムは、運動をして骨に負荷をかけることによって定着します。適度な運動は骨のためにも必要です。また、ビタミンDは日光にあたることで皮下でも作られます。
まとめ
骨粗しょう症は更年期を迎えた女性にとって、身近な気をつけたい病気のひとつです。骨の健康を維持してきたエストロゲンの働きが閉経とともになくなり、骨がもろく骨折しやすくなります。骨折が原因で寝たきりになる人も少なくありません。
骨量は閉経後5年間に急激に減少します。更年期になったら骨量測定をして自分の骨の状態を知っておきましょう。整形外科や婦人科でも測定できます。なりやすい人は閉経後1年以内には検査を請けましょう。
骨粗しょう症にはホルモン補充療法(HRT)が有効です。最近では治療薬も次々と開発されています。しかし、まずは骨の健康維持が重要です。予防には食事と運動が効果的です。カルシウムとビタミンDをしっかりとって丈夫な骨を保ちましょう。