更年期のさまざまな不調の緩和に高い効果が期待できるHRT(ホルモン補充療法)ですが、実際に治療を受ける前に基本的なことは知っておきましょう。
なぜなら、ひとことでHRTといっても投与方法や投与スケジュールが違います。さらに、年齢や目的、薬に対する感受性も個人差があるからです。
HRTの主役はエストロゲン!
HRTでは基本的にエストロゲン剤と黄体ホルモン剤の2剤を使います。でも、主役はエストロゲン剤。黄体ホルモン剤は子宮内膜の増殖を抑えるために投与します。これは子宮体がんのリスクを軽減するためです。
効果を知ろう!エストロゲン剤の3つの種類
ひとくちにエストロゲン剤といっても作用によって3つの種類があります。
- エストロン(E1)
- エストラジオール(E2)
- エストリオール(E3)
一番作用が強いのがエストラジオール(E2)
3種類のエストロゲンの中でもっとも生理活性が強いのがエストラジオール(E2)です。その強さは、エストロンの2倍、エストリオールの10倍!
血中のエストラジオール(E2)値は更年期かどうかの判断基準にもなります。正確に言うとエストラジオール(E2)・卵胞刺激ホルモン(FSH)・黄体化ホルモン(LH)・甲状腺ホルモンの量から判断されます。
血液中のエストラジオールが低い値で女性ホルモンの分泌を促す卵胞刺激ホルモン(FSH)や黄体化ホルモン(LH)が以上に高いのが更年期の特徴です。
現在もっともよく使われているのがエストラジオール製剤です。
HRT(ホルモン補充療法)は経口投与と経皮投与が基本
更年期障害の治療では、主に飲み薬と皮膚に貼るパッチ剤があります。
経口薬のデメリット
従来は飲み薬だけでしたが、その場合かなりの部分肝臓で分解されてしまうのでその分を考えて必要以上の量を飲まなければなりませんでした。当然胃や肝臓に負担がかかります。
現在はパッチ剤も開発されていますし、経口薬も少量の投与が行われるようになっているので、こうした副作用は出にくくなっています。
副作用軽減のためにパッチ剤の開発
大量の女性ホルモンを摂取することで血栓がつくりやすくなるという副作用もありました。これは脳梗塞や心筋梗塞につながる恐れもあります。これを解消するために皮膚に貼るパッチ剤が開発されました。
皮膚に薬剤を貼ることによって毛細血管に吸収されて静脈に入り、そのまま心臓に送られます。経口薬と違って肝臓で分解されることがないので、少量で済むのですね。
ホルモン剤の投与方法は?スケジュール別4つのタイプ
HRTでは薬の投与の仕方が4タイプあります。患者の希望や状態にあわせて使い分けているのです。
- 周期型
- 休薬期間のある周期型
- 2剤継続型
- エストロゲン単独投与型
それぞれの特徴と向いている人を紹介します。
周期型の投与方法と向いている人
エストロゲン剤を毎日服用します。そのうち1ヶ月の後半の12日から14日間黄体ホルモン製剤を併用して飲みます。黄体ホルモン製剤を飲み終わる頃に月経のような出血があります。月経と同じホルモンの波を作っていく方法です。
向いている人は、
- 月経があるうちから更年期障害に悩まされている
- 閉経して間もない人
- 月経様の出血が気にならない人
休薬期間のある周期型
上記の周期型の方法に1週間前後の休薬期間を設ける方法です。こちらの方がより自然の月経サイクルに近くなります。
ただ、この方法だと薬を飲んでいない期間に症状が強く出てつらいという人もいます。その場合は周期型に切り替えます。
2剤継続型が向いているのは?
エストロゲンと黄体ホルモン剤を連続的に併用する方法です。飲み始めてから半年程度はおりものに血が混じったり、不定期な出血がありますが次第になくなっていきます。
この方法は、周期型(休薬期間のある場合も含めて)のように出血があるのがわずらわしいといういう人や閉経後数年経っている人に向いています。
エストロゲン単独投与型はどんなとき?
字の通りエストロゲン剤だけを投与する方法です。これは、子宮を摘出した人は子宮がんの心配がないので、黄体ホルモン製剤は使いません。
それ以外にも、エストリオール(E3)は子宮内膜に及ぼす作用が弱いので、単独投与がされることもあります。
自分にあった投与方法を撰びましょう
このように、HRTでは薬の飲み方(貼り方)によって特徴があり、そのときに向いている症状の人、本人の過ごしやすさなどを考慮した治療法を選ぶことができます。もちろん医師と相談しながらですが。
自然な月経サイクルに沿った周期型(休薬期間のある方法も含めた)が好まれているようですが、周期型から休薬期間を設ける周期型、状態によってはエストリオールの単独投与へ切り替えていくなども可能です。
リスクはゼロじゃない!HRTに定期的な検診は必須
ホルモン補充療法は紆余曲折のを経て現在に至っています。副作用やがんなどのリスクを最小に抑えるために現段階でも研究開発が進められています。
当初の懸念はだいぶ拭い去られていますが、それでもリスクはゼロではありません。治療を始めるときには乳がんや子宮がん検診、骨量測定、肝臓や腎臓などを詳しく調べます。治療中もこれらの検診をしっかり受けることがたいせつです。